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JBLが聴ける店・Sound of JBL | 京都・祇園 BAR TALISKER

JBLが聴ける店・Sound of JBL

京都・祇園

BAR TALISKER

祇園に新風を吹き込む
名店バーが選んだ名脇役4344

JBLが聴ける店・BAR TALISKER

銀座の頂点を極めた名店が京都・祇園にやってきた。

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【上】南祇園(四条通の南側)の閑静な通りの1階にある「BAR TALISKER」。【下】18年間、銀座で続けてきたバーを閉店し、京都・祇園に2年前に移転した「BAR TALISKER」のオーナー・内田行洋氏。モスコミュールやジントニックといったカクテルから、「ハイランドパーク25年」や「1952コール」といった他ではお目にかかれないボトルまでがズラリと並ぶ。内田氏の圧倒的な知識を求め、海外からも客が訪れる。

 京都・祇園で今もっとも注目を集めているバーのひとつが「BAR TALISKER(バー・タリスカー)」だ。四条通の北側がきらびやかな店が連なる繁華街に対し、茶屋や置屋、寺院が並ぶ南側は祇園の奥座敷ともいえるしっとりとした佇まい。そんな場所にオープンしたのが2016年7月。まだ2年あまりなのに、その知名度はバーをこよなく愛する人たちにはすでに全国レベルとなっている。なんせ東京・銀座で18年間という長きに渡り看板を掲げていた名店が上洛を果たしたのだから。

オーナーの内田行洋氏は、22歳で六本木の有名店でバーテンダーとして働きはじめ、1998年には銀座でオーナーとして独立する。その間、週刊文春の名物コーナー「東京うまい店 おいしい店」で最高ランクの4つ星(銀座では2軒のみ)を獲得したほか、2003年には「マイ・スタンダード・カクテル ベースの酒の生かし方」というカクテルブックを執筆するなど、バー業界では日本はもとより、世界で知られる存在。そんな内田氏がなぜ京都に来ることになったのだろうか。

「銀座でそのままやっていくことはできたと思います。でも、このまま銀座にいたら甘えてしまうなと。自分のなかに新しい風を入れ込まなければ自身が寂れてしまう。そんな悲壮感もありました。もうひとつ、東京オリンピックを機に銀座という街が変わっていくこと。自分の愛する銀座ではなくなるならば、他のところに移ってみたい。そう考えると、京都しかなかったんです」

 四条通の喧噪が嘘のように落ち着いた通りのビルの1階。決して隠れているわけではないが、知っている人しか開くことはないだろう堅牢なドア。そして、その向こうには、別世界が広がっていた。

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【上】約5mの長さのカウンターは、銀座の店から持ち込んだもの。カウンターの中央に座ると、中央にセンターテーブル、その両サイドにボトルがシンメトリーに並んでいる。【中上】店内の奥には、小さな小窓が置かれている。暖炉を思わせる暖かいレンガと、銀座から持ってきたという太い梁を浮かび上がらせるシャンデリア。【中下】4344を心地よく鳴らせるために、奥行きのあるバックカウンターにレイアウトした。エンクロージャーを含む総重量は96kg。【下】パワーアンプにはマッキントッシュMC2500、コントロールアンプに同じくマッキントッシュC34V、ターンテーブルはDENON。レコードはジャズとクラシックで合わせて1500枚以上が置かれている。

カウンター越しは、バーにとっての舞台。

 店に入ると、年代物のランプが点々と灯るなか、野性味あふれる太い梁に、5mはある伸びやかな楢のカウンターが浮かび上がり、店の奥の小窓からは京庭が見えてくる。カウンター正面にはアールヌーボー風の丸みのあるセンターボードが置かれ、その両サイドのバックカウンターと、色ガラスを照らし出すグラス棚に惹きつけられる。

「梁やカウンター、照明は、銀座の店からそのまま持ち込みました。カウンターに座る人の目線を考えてシンメトリーにレイアウトしています」

まさに内田氏の美意識が注ぎ込まれた空間。そんなバックカウンターの最奥に置かれているのが4344だ。1982年に製造されたもので、低域38cmコーン型ウーファーの2235H、中低域は25cmコーン型ミッドウーファーの2122H、中高域には2421B、高域にはホーン型ツイーター2405を搭載。縦1051mm×幅635mm×奥行き435mm、重量96kgという4344の巨大なエンクロージャーありきでバックカウンターは設計された。

「京都に移転する際に、ずっと探していた4344に出会えたんです。ならばそのサウンドをしっかり鳴らしたい。それにはスピーカーとの距離感は必須。そこで、バックカウンターの奥行きを広くとったレイアウトにしたんです。カウンター越しは、バーにとっての舞台ですから」

 そもそも内田氏とJBLとの出会いは、銀座にあった「ジャズカントリー」というジャズ喫茶だった。そこで出会ったJBLの音が、内田氏にとってのJBLの原体験。パワーアンプの銘柄は変わっても、JBLへの想いは変わることはなかった。

「銀座の店で使っていた4312Aとは単純に比べられませんが、4344は柔らかいのに輪郭がしっかりしたサウンドを奏でてくれますね。私が求めるバーには欠かせないもの。グラスと同じで、音楽はバーの名脇役です。邪魔になってはいけないけど、ないと絵にならないと思っています」

 

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【上】ジャズ〜クラシックまで幅広くカバーする内田氏が厳選した3枚。左からアン・バートン「Ballads & Burton」、武田和命「Gentle November」、ロザリン・テューレック「J.S. Bach Goldberg Veriations」。【下】内田氏オススメの「モスコミュール」(1300円)。冷えた銅製マグカップで出された1杯は、ショウガと糖を発酵させたジンジャーピアに、ライムとレモンを混ぜたもので、モスコミュールの概念を覆す驚きがある。常時4種類のモスコミュールを用意。プレーンウォッカと辛いウォッカにより、あわせる飲料水を変えているとのこと。

埋もれていたサウンドを引き出す圧倒的な再生力。

 ジャズとクラシックを中心に1500枚以上のアルバムを収蔵し、店内で毎日8〜9時間を過ごす内田氏。マリア・カラスが流れる店内でのサウンドは、聴きたい人に心地よく響く、まさに名脇役という言葉がよく似合う。そんななか4344のポテンシャルがよくわかるアルバムは? という問いかけに対し選んでいただいたのが、マイルス・デイビスの「Four & More」だった。

「50年代、60年代のジャズがこのスピーカーにはピッタリですね。マイルスならば『Kind of Blue』のようなクールなサウンドも好きですが、『Four & More』はとにかく熱くて気持ちいい。なによりトニー・ウィリアムスのドラムに尽きますね。4344で聴くようになって、激しいドラミングのなかから聞こえる細かいニュアンスがよりわかるようになり、さらに好きになりました」

 これまで聴いてきたオーディオでは埋もれていた細かなシンバルワークがしっかりと感じられる。「こんなことをやっていたのか!」と、出会って何十年も経つアルバムに新たな発見があるほど嬉しいことはない。圧倒的なスピード感で迫るドラムに対し、ハンコックのモーダルなコードと、ロン・カーターの余裕すら感じるベースプレイ、そしてマイルスにしては熱いトランペット…。ライブ会場での立ち位置までがわかるような空気感が再現されていた。

もう1枚、ターンテーブルに載せていただいたのが、今は亡きサックスプレイヤーの武田和命「Gentle November」。立体感のあるドラムのブラシワークから立ち上がる屹立したテナーサックスの音色が心地よい。身体に染みこむテナーサウンドとともに、息を飲み込む音まで聞こえてくる高い表現力は圧巻。時間を忘れて、じっと聴き入ってしまう。

「お気に入りの酒と心地よい音楽がある自分だけの空間。そんな書斎を誰もが持ちたいですよね。私は、この店をみなさんにとっての書斎でありたいと思っています」

 京都で店を開いて2年。鴨川や高瀬川、白川など、近くを流れる川に心が癒やされる毎日という。そんな内田氏の目に京都・祇園はどのように映っているのだろうか?

「まだ2年ですが、奥に行かせていただくほどに京都の良さが感じられます。かむほどに味がでてくるといえばいいでしょうか。まだまだわからないことも多いですが、これから祇園に新たな風を吹き込んでいきたいですね」