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JBLが聴ける店・Sound of JBL | 小岩・ニューフルハウス

JBLが聴ける店・Sound of JBL

小岩

ニューフルハウス

老舗から引き継いだ
「4343」が奏でる
圧倒的な再現性を体感。

JBLが聴ける店・小岩 ニューフルハウス

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【上】無骨な様子でレコードが並ぶ。譲り受けた伊藤さん自身も「実は何枚あるのか、いまだに調査しきれていません(笑)」。【中】コーヒーは自家焙煎した豆をていねいに挽き、淹れている。コーヒーもそうだが、フードメニューも昔ながらの喫茶店の雰囲気。【下】テーブルはかつての足踏み式ミシンをリメイクしたもの。ミシンが収まっていたスペースには、先代のコレクションが飾られている。

 商店街が密集し、そこかしこに個性的な店が立ち並ぶ町・小岩。ジャズスポットも点在するこの町でもっとも歴史あるのがここ「ニューフルハウス」だ。
 創業41年ながらも“ニュー”を冠するにはワケがある。実は、2015年5月に先代の「フルハウス」は閉店した。だが、その1ヵ月後、現店主・伊藤稔さんが店を引き継ぎ「ニューフルハウス」として再スタートさせたのである。
 長年ジャズファンに愛されたこの店を継いだ伊藤さんは、先代オーナー江田清氏のご子息でも親戚でもない。はたまた常連客でもなかった。なのに、どうやって後継者になったのだろうか?
「ネットにアップされていたんですよ。『店主高齢のため引退します。ジャズファンの皆様でぜひジャズの店を経営してみたい人がいたら譲りたいと思います』と。」
 当時、伊藤さんは45歳、技術職のサラリーマンだった。趣味はジャズのライブ鑑賞で、「いつかはジャズのライブハウスをやりたい」という夢を持っていた。とはいえ、“いつか”はいつか。特に“何年後に”とは決めていなかった。が、この募集を見て、はじめて「フルハウス」を訪れ、引き継ぐという決意を固めた。そう、図らずとも早々に夢を叶えてしまったのだった。 
 飲食業での経験は学生時代のアルバイトすら皆無。だが、先代オーナーに徹底的に鍛えられ、定番メニューの数々、コーヒーの自家焙煎などをマスターし、伝説の店が新たな一歩を踏み出した。

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【上】「ちょっと調子が悪くて(笑)」とキャビネットは付けたまま。【下】閉店間際、最後のレコードをかけるときは、このように……。

そのまま受け継いだジャズの矜持

 “伊藤さんが受け継いで一年、現在も店のそこかしこが長年愛されてきたままとなっている。唯一違うことといえば、扉を開けてすぐ横の壁に飾られたレコードだろうか。店に赴くと、ついスーッと通り過ぎ、奥の客席スペースに向かいがちだが、これらのレコード類を眺めれば、伊藤さんの嗜好がちょっとわかるかもしれない。
「ジャズを好きになったのは高校生のころ。稲毛に住んでいましたので、近くに『キャンディ』さんや『コルトレーン』さんがあったんです。当時はジャズ喫茶というものがなんだかわからないまま、コーヒーを飲みに通っていました。1988年ごろのことです。コーヒー一杯で何時間いたかなぁ(笑)」
 コーヒー目当てだったのが、そのうちジャズに魅了された。寺島靖国氏の『辛口! JAZZノート』を読み耽り、すっかりジャズファンになった。そのままずっとジャズ街道まっしぐら! かと思えば、
「大学、サラリーマン時代初期は、お金がかかるのでCDもレコードもなかなか買えませんでした(笑)」
 だが30代になると余裕が出てきて、ジャズのライブハウスへと足を運ぶようになる。レコードにはないライブならではの臨場感や、自分のリクエストに応じて演奏してもらえる高揚感、何よりミュージシャンたちを近くに感じられることが楽しくて仕方なく、ジャズへの想いを募らせ、今に至るのである。
 “そのまま営業すること”が条件ゆえにスピーカーもそのまま「4343」が大きな存在感を放っている。「4343」はプロユースのスタジオモニターだが、一般家庭にも受けた人気モデルだ。ウォルナットにブルーのバッフルという、いかにもJBL然としたルックスに、各ユニットのレイアウトの機能美がまた素晴らしい。
「憧れのJBLもそのまま譲り受けることができるなんて感激しました。4343からジャズが聴こえるたびに、『ジャズ喫茶のオーナーになったんだなぁ』という実感がわいてきます」
 当然、レコードも受け継いだ。約3000枚のレコードのほとんどはモダンジャズ。伊藤さんがなかでも愛聴するプレイヤーはジョン・コルトレーン、マイルス・デイビス、ビル・エバンスだという。
「お店の広さが約50平米ありますが、充分な音で鳴ってくれます。ビル・エバンスのようなピアノトリオを自宅のミニコンポで聴いても、ベースラインがよく聴きとれませんが、4343ではハッキリと聴こえます。知っている曲でも、ミュージシャンは “こういう演奏をしていたのか!”と後から納得することがたびたびあって感激しますね。お客様からもそういう感想をいただくことが多く、とてもうれしいです」
 そう言いながらコルトレーンをかけてくださった。柔らかな音が静かに弾けて心地よい。サックスの音色が切なく響いてきた。

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【上】オープンして1年。エプロン姿も初々しい伊藤さん。【中】コーヒー(ブレンド)は440円。あっさりといただけるツナサンドは600円。【下】おつまみメニューも充実。ピザ・マルゲリータは700円。ジントニックは700円だ。

何時間でもいたくなる、
くつろぎの空間

 先述の通り、 「いずれは自分の店を」と夢を描き、予想よりは時期が早いものの、それを叶えてしまった伊藤さん。しかし、生半可な覚悟ではない。だって “なにも変えずに営業する”なんて、下地があるだけに一見簡単そうだが、そんな甘いものじゃない。これまで通っていた常連客の目があるし、変わらずに営み続けるということは、常に平均点を出さねばならない、ということだ。
 しかし伊藤さんがそうした気負いや気合いでみなぎっているかといえば、決してそうではない。ほんわかとあたたかな表情で、毎日客をもてなしている。
「コーヒーはオーダーをいただいてから豆を挽き淹れますから時間がかかります。そうした時間も含めて、ゆったりと過ごしてほしいですね」
 そうした“憩いの空間”こそが、本来の喫茶店であることを思い出させてくれた。もちろん、ライブハウスとしての矜持も高く、週に1?2回はライブを、1回はジャムセッションを行っている。また、つい先日はファミリーで楽しめるライブも開催し、地元の人々との交流も深めている。経年して馴染んでいる店内のそこかしこに、伊藤さんならではの “ニュー”が寄り添っていた。