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JBLが聴ける店・Sound of JBL | 早稲田 | JAZZ NUTTY

JBLが聴ける店・Sound of JBL

早稲田

JAZZ NUTTY

甦った「4331B」が生み出す
奇跡のサウンド。

JBLが聴ける店・早稲田 JAZZ NUTTY

花屋さんからの転身で開業したJAZZ喫茶。

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【上】店頭には「ミュージシャンの魂を聴きとれ!」とのメッセージが掲げられる。【下】一から設計された店内は、真剣にJAZZを聴くことができる落ち着いた雰囲気。

 早稲田大学に程近い一角に佇む「JAZZ NUTTY」。この店は、オーナーの青木一郎氏が2008年に開業した本格派JAZZ喫茶であるが、そのオーナーの前身が非常にユニーク。東京・蒲田で26年に亘り「花屋さん」を営んでいたのである。
「学生時代にJAZZ研究会に入っていたほどJAZZにのめり込んでいましたので、蒲田で花屋を開業したときも、迷わず“サッチモ・フラワー”という店名にしました(笑)。もちろん店内は常にJAZZを流していましたし、畏れ多いですけど僕自身も“サッチモさん”と呼ばれていたりして(笑)、ちょっと変わった花屋として地元では知られていたと思います」
 ところが、地域の再開発により「サッチモ・フラワー」の立ち退きが決定。同氏は地元で代替地を探していたが、いい場所が見つからず、徐々に移転先候補地の範囲を広げていった。
「それこそ、東京中を探しました。でも、全く新しい場所で花屋さんを続けても、お客様が付くまでに時間がかかります。だったら、いっそのこと昔からの夢だったJAZZ喫茶をやろうと思いました」
 移転先の候補地のひとつだった早稲田は、花屋は難しくても、JAZZ喫茶にはピッタリの場所だった。早稲田は昔よりJAZZ喫茶が多く存在した聖地のひとつ。現在も早稲田大学には大きく4つのJAZZ研究会があり、ある程度お客様も見込めると思ったそうである。
「僕が、学生時代によく通ったような、本気でJAZZを聴ける店は少なくなっていると思いましたので、そのコンセプトを復活させたかった。ですので、JAZZを集中して聴ける店を作り、早稲田で第二の人生を始めようと決意したんです」

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【上】フルレストアで甦った1980年代初頭の2ウェイ2スピーカー「4331B」。低音域には38cmコーン型ウーファ「2231H」、高音域にはホーン「2312」が搭載されている。【下】左スピーカーの上に階段はないが、階段状の斜めの壁を造りシンメトリー化。バランスの取れた安定した音を生み出している。

偶然が重なり甦った
4331Bが奏でる驚きの音。

 開業にあたって、オーディオ選びは大きな問題だった。そんな時、第一の偶然が訪れた。知人から「壊れているけど“4331B”があるよ」という話が舞い込んできたのである。
「エッジもボロボロで、もちろん音も鳴りませんでした。でも、何か感じるところがあって、そのスピーカーを貰ったんです」
 青木氏は貰ったスピーカーの修理先を探し始めた。そんな中、ちょうど、新聞でレストアショップの記事を見つけたそうである。
「電話すると、任せておけと言われ、すぐに4331Bを送りました。思いもよらず手に入れたスピーカーと偶然読んだ新聞記事。そして、たまたま見つけた早稲田の地。JAZZ喫茶を始めろとサッチモに言われているようでした(笑)」
 そして約半年後、フルレストア済みの「4331B」が開業準備中のお店に届いた。「4331B」の大きさ、高さに合わせて店内を設計し、あとはスピーカーを定位置にセッティングするだけの状態で待ち焦がれていた到着だった。
「4331Bは鳴らない状態でしたので、初めて音を聴くことになります。ドキドキしますよね(笑)。考えた末に、最初に選んだのはセロニアス・モンクの“ヒムセルフ”でした……。本当にびっくりしましたね。中低音の豊かさ、各楽器の輪郭がはっきりわかったんです。大きな音もすごくいい。月並みな表現ですが、本当にミュージシャンが目の前で演奏しているようなライブ感でした。他のレコードでも、例えばポール・モチアンやエルビン・ジョーンズのドラムでも繊細なブラシワークの音が見事に再現されます。ボーカルも息遣いまで聞こえてきます。“ああ、本当はこんな音だったんだ”という驚きしかありませんでした」
 同氏は、スピーカーとの相性を考え「4331B」の内部配線で使用するケーブルの種類を調べ、それをスピーカーケーブルとしても使用するように準備していた。
 同店に設置された「4331B」は、店の広さを考え、音を遠くまで飛ばす必要がないためホーンレンズが取り外された以外は、場所もセッティングも変えられていない。一発でサウンドも決まり、現在も毎日至高のサウンドが鳴り続けている。
「長年のエイジングおかげでしょうか。音も馴染み、今が一番いい状態だと思います。あとは、この音をどう守っていくかが課題ですね」
 現在、この音に惚れ込み、遠方からLP持参で訪れるお客様も多い。この「4331B」で、自分の大好きなレコードを聴いてみたいというわけである。
「他のお客様にもぜひ聴かせてあげて欲しいということで、お預かりしている貴重なLPも沢山あります。こうやって、素晴らしいJAZZを、素晴らしい「4331B」で、皆さんとシェアできるのも、この店をやってよかったと思えることのひとつですね」

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【上】一杯一杯丁寧に奥様が淹れるコーヒーはオリジナルブレンド。店内のメニューはすべて500円均一という良心的な価格で提供される。【下】店内には約2000枚のLPが並ぶ。毎日、何をかけたかが記録され、お客様の好みを把握。次回来店時の選曲の参考にしている。

大学ノートがお客様の満足を生む。

 青木氏が目指すJAZZ喫茶とは何か。
それは「JAZZを真剣に楽しく聴くことができる店」である。そのためには、お客様の好きな曲を聴いていただくのが一番と考えた。
「大学ノートに、来店したお客様の好み、来店時に何をかけたかを全部記録しています。初めて来店されたお客様でも、観察していると、表情や態度、ノリなどで、好きな曲、好きなミュージシャンの傾向はわかります。もちろん、リクエストがあった場合は、その曲も書いておき、次回に何をかけるかの参考にします。前回と違う曲で、なるべくそのお客様の趣味に合う曲をかけて、楽しんでいただけるようにしています」
 さらに、同店では、お客様の顔ぶれを考えつつ、皆さんのお好みの中に混ぜて、青木氏の一推し曲もちょっとずつ流される。
「僕自身は、デューク・エリントン、セロニアス・モンク、ビリー・ホリデイが好きなんです。エリントンは有名ですが、無限に作品がありますし、実は追い切れていない方も多いと思います。また、カバーも多数ありますが、ちゃんとエリントン本人のオリジナルも聴いて欲しい。エリントンは本当に奥が深いです。ですから、知られているようで、あまり知られていないエリントンを、こっそり推しています。もちろん、エリントンが好きではないというお客様もいらっしゃいますので、そういう時はかけません。そこで、お客様の表情が曇ると、僕自身が傷つきますし(笑)」
 徹底したお客様の好みの記録・分析により、何度来ても、新たな曲が楽しめる。新しい発見や出逢いがある。しかも、自分好みのJAZZが堪能できる……。同店はJAZZを真剣に聴ける店として、早稲田にしっかりと根付いた。もちろん、開店時の狙い通り、早稲田大学のJAZZ研のメンバーも多く訪れるようになった。
「4つのJAZZ研は、それぞれJAZZの志向も違いますが、本当によく通ってくださいます。ですから、毎日気が抜けません。誰が来たからこういう曲、前回とは違ったパターンといった具合に勝負しています(笑)。ノートの記録も大事ですが、顔ぶれや、その時の空気を考えて、瞬時に選曲を決める。そして、皆さんが楽しそうな表情になると、本当に嬉しいですね」
 同店は、食事のメニューが一切ない。まさに昔ながらの硬派なJAZZ喫茶である。しかし、値段は安い。オリジナルブレンドのコーヒー、お酒類、ソフトドリンクなど、すべて500円均一で提供される。
「やっぱり学生の街ですし、高い料金は取れません。ちょっと苦しい面もありますが、学生さん始め、お客様の嬉しそうな顔をみていると、この値段で頑張って続けて行こうと思います」
 青木氏は「お店はお客様がつくる」と何度も強調していた。同店はJAZZを愛するお客様に恵まれ、真剣に音楽を楽しめる本格的なJAZZ喫茶に成長した。これからも「JAZZ NUTTY」は、ここ早稲田の地でお客様を楽しませ続けるに違いない。