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JBLが聴ける店・Sound of JBL | 神保町 | The Adirondack Cafe

JBLが聴ける店・Sound of JBL

神保町

The Adirondack Café

「LANCER99」が鳴らす
オリジナル盤ならではの
重厚な音の洪水。

JBLが聴ける店・神保町 The Adirondack Cafe

"ジャズ食堂"ならではの本場仕込みのハンバーガーにヤミツキ!

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【上】調理は滝沢さんの奥様が手がける。名物はなんといってもハンバーガー。「アディロンダックバーガー(ビーフ)」にアボカドをトッピングして1,100円。生ビールは600円。【中下】ニューヨークの街の写真も印象的。写真前が店のほぼセンターとなる。ここに座り、カウンターを眺めながら、ジャズの音色に酔いしれたい。

 レコード店にジャズ喫茶、ジャズバーにジャズ専門のライブハウス、そして楽器店が点在する町・神保町。古書店街としての顔が目立つが、音楽ファンの聖地としても知られている。なにより1970年代中頃までは、このあたり神保町~御茶ノ水界隈は"日本のカルチェ・ラタン"と称されたほどの学生街であり文化発信の町。往時の大学生に人気のモダン・ジャズが溢れるジャズ街であったのだ。
 そんな町の路地裏、ビルの4階にある「The Adirondack Café(アディロンダックカフェ)」は、地元の"ジャズ食堂兼カフェ"的存在で、鋭敏なジャズファンのみならず、"おいしいごはん"を求める人々に愛されている店。ジャズ喫茶というと、つい「怖いマスターが鎮座し、食事どころか私語禁止」というイメージがつきものだが、こちらはそんな心配は一切無用。マスターの滝沢理さん曰く、
「うちはなんの制限もありませんから。食事や会話を楽しんだり、音楽に集中したり。昔のジャズ喫茶はあれこれありましたけれど……(笑)、今はそういう時代じゃありませんよ。心地よい空間で思い思いの過ごし方をしてくださればいいんです」
 だからか、ビール片手に名物のハンバーガーに噛り付く人がいれば、ロコモコ丼をかきこむ人もいるなど雰囲気は極めてアットホームだ。とはいえ、レコードは滝沢さんの眼鏡にかなったオリジナル盤がほとんど。それもそのはず、この店を開く前は、ここから九段下方面に離れた場所で、ジャズのオリジナル盤レコード専門店を。さらにその前は、本場ニューヨークで20年以上、同じく専門店を経営なさっていただけに、よそでは滅多にない希少盤に出会える可能性大なのだ。

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店内の両端に吊り下げられている「LANCER99」。小さな筐体ながらも豊かな低音とバランスはさすがのひと言。現在と異なるエンブレムもナイス!

「これしかない」と狙っていたLANCER99に出会えた。

 店名の"アディロンダック"とは、ニューヨークにある州立の自然公園の名前だ。ニューヨークでレコード店をはじめる際、「ほかにはない、そして一見、レコード店と思われないような名前にしよう」と名付けたという。アディロンダックは公園だが日本の「公園」とは規模がまったく異なり、ひたすら広大な森である。滝沢さんにとって、ニューヨーク在住中、よく出かけたという思い出の地だそうだ。だからか、店内はそうした自然=ウッディな温もりで溢れている。そして、そんな細長い店内にセッティングされているのがJBLの「LANCER99」だ。コンパクトな筐体ながらも豊かな低音が響く。手彫り格子のグリルも美しい。
「15年ほど前、友人に紹介されたオーディオ屋さんで手に入れました。これしかないと惚れ込んでね。でも、ビンテージものを扱うと、いつ壊れるかがわからない。手のかかるかわいい子だけれど、そんな"爆弾"を抱えながら生活するのは、少し疲れてきたかな(笑)」
 スピーカーのみならず、アンプにレコードプレーヤー、カートリッジ、ケーブル類と……のめり込むと、そこかしこに手もお金もかかるのがオーディオの世界。それがビンテージとなればなおさら。とかく、そうしたスペックや、レコードの枚数を知りたがってしまうが、
「そんなことより、ここに座って、視覚と聴覚をフルに活かして。若い人にはとくにそう話します。若い人たちはジャズが好きでうちに来たのではなくて、雰囲気を気に入って、食事のボリュームにも惹かれて(笑)来るんです。でも何回か来るうちに、"ここでかかっているのはジャズなんだ"と気がつくみたい。
 流れている曲がなんだか知らないまま、ただ聴いているだけなんてもったいないよね? だから、質問されれば、すぐにどんなレコードなのか、ほかにどんなリリースをしているのか、ライブの写真はこうだとか……好奇心を持ったところにすぐに資料をお見せできるから、さらに興味を持ってくれやすいんでしょうね」

 レコードはもちろんのこと、写真集やフライヤーなども豊富に扱ってきた滝沢さんだけに、店のそこかしこに希少なポスター、ジャズメンのポートレート写真などが飾られている。そうしたものを触ることもでき、それにまつわるさまざまなエピソードも教えてくれる。
「いずれ僕たち年配はいなくなるんだから。精神的なところを若い人たちに伝えていきたいよね。それにね、反芻することで自分も勉強になっているの。それって楽しいことだよね」

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【上】そこかしこに飾られたジャケット、写真の数々。眺めているだけでは知識は得られない。臆せず滝沢さんに尋ねれば、もっと深いジャズの世界が広がるだろう。【中下】限定販売された希少な写真集やジャズ専門誌の切り抜きなど、会話の糸口から、サッと適した資料が登場するのもこの店ならではの魅力。

ジャズは目で楽しみ、耳で聴き、全身で感じるものだ。

 サヒブ・シハブの「Summer Dawn」にはじまり、ビル・エヴァンス「Displacement」「Tenderly」、 アンドレ・ベルジアニ「Jive at Five」……と、音の洪水に身を委ねていると、あっという間に時間が過ぎていってしまう。いつまでも居続けたいと思わせる居心地のよさは、レコードのスペシャリストである滝沢さんの選曲なのか、盤の状態がいいのか、それともオーディオのなせる技か、はたまた滝沢さん夫妻の人柄のよさなのか……? いや、どれもが絡み合った総合力が、この空間を生み出しているのだろう。
「健康なとき、若いときは音がすばらしいってわからない。歳をとって聴力が衰えてきてから気付くんですよ、"もっといい音で聴いておけばよかった"って。でも、耳だけでは聴けないのがジャズ。全身で聴かないと真髄はわからない」
 その言葉を実感するには、毎週火曜日の夜に行われるライブに足を運ぶといい。アップライトのピアノを置いたら、どこからともなく演奏したいというミュージシャンが現れたり、知人の紹介で出演者が増えているという。滝沢さん自身によるアディロンダック・レーベルもあり、ライブ盤もリリースしている。
「"音楽というのは一度奏でられると空気の中に消えてゆき、二度と取り戻すことはできない"というエリック・ドルフィーの名言があるけれど、まさにその通り。だからこそライブを体感してほしいですね」