JBL テクノロジー解説

JBL、その名は「音」に人生を捧げた一人の天才エンジニア ジェームズ・B・ランシング のイニシャルに由来しています。
60余年にわたり世界のエンターテインメントを支えてきた JBL、そのテーマは「音と美の追求」です。

[5] スピーカーのインピーダンスとアンプとの組み合わせについて

スピーカーシステムは、それぞれに固有のインピーダンスを持っています。このスピーカーシステムの持つインピーダンスと、組み合わせるパワーアンプに表示されている推奨負荷インピーダンスとの関係について説明します。

スピーカーのインピーダンスとは

スピーカーの持つ電気抵抗のことで、単位はΩ(オーム)です。電気の流れ難さを表す数値で、数字が大きい程電流が流れ難く、数値が小さい程流れ易いことになります。

通常電気抵抗とは、直流に対する抵抗値を指します。これに対し、インピーダンスとは、音楽信号のような交流信号に対する抵抗値を言い、周波数によってその値が連続的に変化します。スピーカーのインピーダンスも同様で、入力される音楽信号の周波数によってその値が変化します。つまり、スピーカーそれぞれに電流の流れ易い周波数と、流れ難い周波数がある、ということです。このように連続的に変化する値ですので、特定の数値をスペックとして挙げることができません。このため、カタログスペックには最も電流が流れ易く、大きなエネルギーを必要とするためにアンプへの負担が大きい、低音域での最小値を表示します。これを定格インピーダンスと呼びます。下図の例では150Hzでの値6Ωがそれです。通常、スピーカーシステムのインピーダンスはこの定格インピーダンスより下がることは少ないので、使う側はこの値だけを考慮しておけばよい、ということになります。

3Wayバスレフスピーカーのインピーダンス特性

パワーアンプの推奨インピーダンスとは

パワーアンプもそれぞれ固有の出力インピーダンスを持ちます。しかし、通常トランジスタ・アンプの出力インピーダンスは、0.0数オームです。この値は必ずしもカタログに明記されていません。カタログスペック、またはアンプの出力端子部に表示されているアンプのインピーダンス表示とは、この出力インピーダンスとは異なり、メーカーが推薦するスピーカーのインピーダンスの使用範囲を表したもので、推奨インピーダンスと呼ばれています。アンプは設計の際、その出力電流値や電源容量などの最大値を決める為に計算上スピーカーのインピーダンスを規定しておく必要があります。この計算上の規定値を元に推奨インピーダンスが決められています。

アンプの出力特性

パワーアンプの出力は、そこに接続されるスピーカーのインピーダンス特性に左右されます。スピーカーのインピーダンスの高低によって出力電流の流れ方が変わるためです。アンプにスピーカーをつなぐ際、そのスピーカーのインピーダンスが高い(数字の値が大きい)程アンプから出力電流が流れ難くなり、アンプから取り出せる最大パワーは少なくなります。逆に、インピーダンスの低い(数値が小さい)程、アンプの出力電流は流れ易くなり取り出せるパワーは大きくなります。低いインピーダンスまで十分に駆動できる理想的な電源を持ったアンプ(一部のハイエンド製品のような)の出力特性とインピーダンスの関係を表に示します。

スピーカーのインピーダンスとアンプの定格出力、電圧との関係

インピーダンス 12Ω 16Ω 出力電圧
定格出力 50W 33.3W 25W 16.7W 12.5W 14.1V
100W 66.7W 50W 33.3W 25W 20V
150W 100W 75W 50W 37.5W 24.5V
200W 133W 100W 66W 50W 28.3V
300W 200W 150W 100W 75W 34.6V
400W 266.7W 200W 133.3W 100W 40V

※表は、4Ω負荷まで完全駆動できるアンプを想定した理論値です。

一方、アンプの出力表示には、一般に定格出力とダイナミック出力(または実用最大出力)が用いられます。定格出力とは、歪を発生させずに連続して長時間出力し続けることができるパワー値を言います。しかし、音楽信号は音量が常に変化するため、アンプは瞬間的にはこの定格出力以上のパワーを発揮させることができます。このことを考慮して測定されたものがダイナミック出力で、定格出力よりも20%〜40%大きな数値を表示できます。

アンプとスピーカーの関係

アンプにスピーカーをつなぐ際、アンプの推奨インピーダンス値よりもインピーダンスが高いスピーカーを組み合わせた場合は、先の表の通り取り出せる最大パワーは目減りしますが、アンプの動作や音質には悪影響はありません。

では、アンプに表示されている推奨値よりインピーダンスの低い(数値が小さい)スピーカーを組み合わせた場合、どのようなことが起こるのでしょうか。スピーカーのインピーダンスが低いと、アンプの出力は流れ易くなり取り出せるパワーは大きくなります。しかし、実際のアンプの出力素子や電源回路には取り出せるパワーに上限があるため、インピーダンスの低いスピーカーを使ってむやみに音量を上げ過ぎるとアンプに負担をかけることになります。

先に述べた通り、アンプに表示されている推奨インピーダンスは、そのアンプの最大定格を満足させるために規定された数値です。実際には、アンプの最大定格は出力電力(W)ではなく、出力に流せる最大電流(A)で決定されます。この最大電流を超える電流が出力に流れようとすると、アンプは回路を過電流から守るために保護回路を働かせ、出力を制限したり音声回路または電源を一時的に遮断します。逆に言えば、そのアンプの最大電流を超えた使い方をしない限り、低いインピーダンスのスピーカーを使用してもアンプの動作には悪影響はありません。

実際のアンプのスペックを元にこのことを計算で示してみましょう。

実用最大出力が100W@6Ωというスペックのアンプに、4Ωのスピーカーを接続した場合を想定してみます。

電流値の計算式:I=√W/R(Iは電流、Wは電力、Rはインピーダンス) から、6Ω負荷100Wの最大出力時、アンプの出力部には √(100W÷6Ω)≒4.1A 4.1Aの電流が流れます。これがアンプの最大出力電流です。つまり、このアンプはこの値までは電流を流しても大丈夫、という数値です。

では、このアンプで4Ωのスピーカーをドライブした場合はどうなるでしょう。 出力値の計算式:W=I2R から、最大電流で4Ωのスピーカーを駆動すると、 4.1 A2×4Ω=67.24W 最大電流で約67Wの出力が得られます。つまり、この出力の範囲であればアンプに負担をかけずに安全に使用する事ができます。通常、4Ωのスピーカーは6Ωのスピーカーより能率が高いため、この出力で十分な音量が得られるはずです。

では、更にボリュームを上げ続けると、どのようなことになるでしょうか。 電圧の計算式:V=√WR から、6Ω100Wの最大出力時、アンプの出力部には √(100W×6Ω)≒24.5V 24.5Vの電圧がかかっています。この同じボリューム位置でスピーカーを4Ωの物に交換すると、 出力電流:I=V/R から、アンプの出力には、 24.5V÷4Ω≒6.1A 6.1Aの電流が流れようとします。この値は先程の最大出力電流4.1Aよりもかなり大きいので、アンプは過大電流から回路を守るために保護回路を働かせるかもしれません。しかし、この時の出力は、電力計算式より W=V×I=24.5V×6.1A≒149W 149Wもの高出力となり、相当の大音響となっているはずです。アンプの電源回路の設計に十分な余裕が無い場合には、ここまでの大音量になる前に音が歪んだり割れたりしますので、ユーザーは事前に自覚できるでしょう。

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