JBL テクノロジー解説

JBL、その名は「音」に人生を捧げた一人の天才エンジニア ジェームズ・B・ランシング のイニシャルに由来しています。
60余年にわたり世界のエンターテインメントを支えてきた JBL、そのテーマは「音と美の追求」です。

[1] JBLコーンユニットの基本構造

JBLのコーン型ユニットには、高能率、低歪み、高耐入力、高リニアリティーを追求するため、様々な工夫が凝らされています。

JBLユニットの基本構造

下図は、JBLの代表的ユニット「2225H」を例に、コーン型ウーファーユニットの基本的な構造を示した物です。

JBL ウーファーユニット構造図

1:ボイスコイルと磁気ギャップ

ボイスコイルの巻き線長と、マグネットギャップの深さ(トッププレートの厚さ)は、ユニットの歪みとリニアリティーおよび感度に大きな関係を持ちます。JBLウーファーユニットは以下の3つのタイプに大別されます。

1-A:ロングボイスコイル/ショートギャップ (2235H/2245H/1500FE 他)
ロングボイスコイル/ショートギャップ
ギャップの深さよりも長いボイスコイル長を持つ構造です。マグネティック・ギャップの外までボイスコイルの動作領域を持つため、大きな振幅特性が確保できますが、ボイスコイル質量が重くなり、またパワー損失も大きいため能率はあまり高くできません。大振幅時のリニアリティーを確保するためにダンパーの選択が重要になります。重低音再生に適し、スタジオモニター用ウーファーなどに用いられます。
1-B:ショートボイスコイル/ディープギャップ(2220/150-4H/1500AL 等)
ショートボイスコイル/ディープギャップ
ギャップの深さよりもボイスコイル長を短くした構造です。ボイスコイルが常にギャップ内で動作するため、高いリニアリティーと歪みの少ない再生が行えますが、大きな振幅は確保できません。ボイスコイル質量を軽量化できますが、ギャップが厚いため能率を高めるには強力なマグネットを用いてギャップ内の磁束密度を高める必要があります。ハイエンドのホームオーディオシステム用に採用されています。
1-C:ボイスコイル=ギャップ(E110/E120/E130 等)
ボイスコイル=ギャップ
ボイスコイル長とギャップの深さを揃えた構造です。軽量ボイスコイルと高い磁束密度により最も高感度のユニットが設計できますが、歪みと直線性で上記二方式に劣ります。楽器用の高能率スピーカーなどに用いられます。

2:ボイスコイルの素材と形状

ボイスコイル素材の選択や線材の断面形状およびその巻方は、ユニットの感度や許容入力、応答性などに密接に影響します。JBLでは主に以下の素材が用いられています。

2-A:アルミニューム・ボイスコイル
(LE-8T/E130/1500AL)
素材自体が軽量なため高い感度を得られます。また、導通抵抗が高く、同じインピーダンスを少ない巻き線で得られることから軽量化と共にインダクタンスを低くでき、優れた高域特性を得られます。立ち上がり、立ち下がりのレスポンスに優れ、フルレンジユニットやワイドレンジユニットにも適した素材です。また、熱放射性が良く、コイル全体で放熱を行うためパワーハンドリングにも優れます。
2-B:コッパー・ボイスコイル
(2235H/E140)
最も一般的に用いられる銅線によるボイスコイルです。導通抵抗が低く同じインピーダンスでより多くのコイルが巻けるため、質量は増しますが駆動力を高めることができ、図太い低域はハイパワーウーファーやサブウーファーに適します。熱伝導率が良く、熱分布が均一化されるため高いパワーハンドリングと共にパワーコンプレッションを低く抑えられます。
また、ボイスコイル巻き線は、断面形状と巻き方によって以下の特徴を持ちます。
2-a:ラウンド・ボイスコイル 2-a:ラウンド・ボイスコイル一般的な丸線を用いたコイルです。安価で巻きやすく、広く使用されますが、導線間の空隙が多いため巻き線密度を高くできません。また、接着剤により放熱が妨げられるため耐熱性も良くありません。通常ウーファーでは巻数を増やすため2層から4層に巻いて使用します。
2-b:エッジワイズ巻きリボン・ボイスコイル 2-b:エッジワイズ巻きリボン・ボイスコイル扁平リボン形状に加工されたボイスコイルを縦長方向に密集させて巻き上げます。巻き線密度が高く、同じ磁束中により多くの導線を配置できるため高い感度が得られ、切れの良い再生音が望めます。また、コイル同士の接触面が大きいため熱伝導に優れ、コイルの発熱を均一に分散でき、パワーハンドリングも優れています。線材自体の加工と巻き上げに高度な技術が求められます。
エッジワイズ巻きリボン・ボイスコイルJBLでは一般的な1対4程度の扁平率のものから、さらに高いボイスコイル密度を得られる1対10を超える超扁平コイルまで実用化させています。この超扁平リボン・ボイスコイルは、Project K2 S9800のウーファー1500ALに採用されています。
2-c:フラット巻きリボン・ボイスコイル 2-c:フラット巻きリボン・ボイスコイル扁平リボン線を横方向に平たく巻いたボイスコイルです。ラウンドボイスコイルに比べ巻き線密度が高く、さらにコイル同士の接着強度が高いためコイル部の剛性も高められます。線材のコストはエッジワイズ巻きと変わりませんが、巻き加工が容易なため量産に適します。JBLでは高いパワーハンドリングが求められるカースピーカーに主に用いられています。

3:ボイスコイル・ボビン

ボイスコイル・ボビンには、狭いマグネット・ギャップ内でボイスコイルを真円に保ち、駆動部とコーン紙をロスなくつなぐ剛性の高さと、共振や共鳴を起こさない柔軟性、ボイスコイルの発熱に耐える高い耐熱性が求められます。JBLでは主に以下の素材が用いられています。

3-A:ペーパー・ボビン 紙を素材とした軽量で安価なボビンですが、耐熱性と剛性が低く、パワーハンドリングの小さな小型ユニットに用いられます。
3-B:クロス・ボビン 不燃布に耐熱性ボンドを含浸させたボビンです。ペーパーボビンより耐熱性は高いものの、剛性は低く、やはり小型ユニット向きの素材です。これに対し、グラスファイバーを基材とし、これに熱硬化樹脂を含浸させ耐熱性と剛性を高めた高耐熱クロスボビンは大型ユニットにも使用されています。
3-C:NOMEXTMボビン DuPONT社の開発したポリアミド系高耐熱ナイロン素材です。コーン紙やダンパーとの接着強度に優れるため、振動系全体の強度を高めることができます。
3-D:KAPTONTMボビン 同じくDuPONT社が商標を持つポリイミド系樹脂フィルムで、NOMEXよりさらに高い耐熱性能と剛性を誇ります。摩擦抵抗が低いため接着が難しく、機械強度を高めるために接合部の工夫が必要です。
3-E:アルミニューム・ボビン アルミニューム・フィルムを用いた剛性の高いボビンです。厚さが薄いためギャップ間隔の狭い磁気回路にも適応します。抜群の耐熱性と共に放熱効果に優れ、パワーハンドリングを高めることができます。しかし金属素材であるために、磁界内で渦電流が発生し電磁制動により低域出力を抑制してしまう点や、ボイスコイル断線時にショートさせる恐れがある点など、使い方に注意が必要な面もあります。

4:ダンパーの素材と形状

ダンパーは、コーンが正しいピストニック・モーションを行えるようボイスコイルボビンを支え、また静止時には正しくセンター位置を保持することが役目です。振幅特性をコントロールする重要なパーツであり、その選択がユニットのリニアリティーや歪みに大きく作用しますで、エッジなど他の振動系との相性から最適なコンプライアンスのダンパーを選択する必要があります。JBLウーファーには振幅特性に優れ、重たい振動系をしっかりと支えることができるコルゲーション・ダンパーが用いられます。素材にはフェノール樹脂などの熱硬化樹脂を含浸させた布を加熱成形したものが主に用いられています。

コルゲーション・ダンパー

JBLのフラッグシップ機K2を初めとする最新ユニットには、追従性に優れたNOMEXTMダンパー二枚を上下対称に配置し、正確なピストン運動とリニアリティーの改善を果たしたデュアルダンパーを採用しています。

デュアルダンパー

5:エッジの素材と形状

エッジの素材と形状は、歪み特性やリニアリティーに影響を与え、サウンドキャラクターにも重要な要素を持ちます。JBLウーファーには、主に以下のエッジ形状が用いられており、それぞれに適した素材が選択、採用されています。

5-A:ハーフロール・エッジ(2235H/2245H/1500AL/1200FE 他) ハーフロール・エッジ ハイ・コンプライアンスでロングトラベル設計が可能なため、現在最も多用されているエッジ形状です。ダンパーとの組み合わせでリニアリティーとレスポンスをコントロールします。

JBLではコンピューター解析により断面形状を最適化することで、さらなるリニアリティーの向上と歪みの改善を果たしています。ハーフロール・エッジに用いられる素材として、以下の種類があります。
  • ウレタンフォーム:
    最も軽く、最もコンプライアンスの高い素材です。柔軟性と伸縮性に優れ、大きな振幅を期待できますが、コーン紙を支持する力が弱いため正確なピストンモーションを得るためにはしっかりとしたダンパーとの組み合せが必至です。応答性が優れており、エッジ鳴きや固有のカラーレーションも少ないためスタジオモニターなどに多用されています。柔らかな素材で経年変化に弱く、石油化学系素材であるために加水分解を起こす傾向があります。
  • ラバー:
    ウレタンより質量が重く、コンプライアンスも劣りますが伸縮性があり良好な振幅特性を持ちます。コーン紙の動きをダンプする傾向があるため、応答性ではウレタンに劣りますが腰のある太い音を特徴とします。JBLでは主に小口径ウーファーに用いられます。また、経年変化にも比較的強いためカースピーカー用としても広く用いられます。ブチル、ニトリルなど様々な素材があります。
  • EPDMフォーム・ラバー:
    ウレタンフォームの軽量、ハイコンプライアンスと、ラバーの高い耐候性を合わせ持った発泡性ゴム素材です。ゴムエッジに比べコーンをダンプする傾向が少なく、良好な応答性を示します。K2を初めとする最新設計のJBLシステムに採用されています。
  • クロス:
    布をロール状に成形したエッジです。軽量素材ですが、柔軟性を保ちエッジ鳴きを抑えるためにダンプ材を塗布するため、これにより質量がコントロールされます。素材の延びが少ないため最大振幅付近で歪みが増加します。このため振幅のあまり大きく無いユニットに主に用いられます。耐久性の高い素材です。
5-B:マルチプル・ハーフロール・クロスエッジ(2225H/E120/E130/150-4H 他) マルチプル・ハーフロール・クロスエッジ クロス素材を複数のロール状に成形したエッジです。歯切れの良い音が特徴で、高能率ユニットに用いられます。耐久性が高く、楽器用、PA用などのプロ用システムに多様されています。
5-C:アコーディオン・プリーツ・クロスエッジ(2213H) アコーディオン・プリーツ・クロスエッジ ローコンプライアンスながらロングトラベルが可能な布エッジです。エッジ鳴きを防ぐためダンピング材を含浸させてあります。
エッジ幅が広く、輻射により中高域の特性にディップが生じる傾向がありますが、芯のしっかりした腰の座った音が特徴です。JBLでは4312シリーズのウーファーに用いられ、その独特のキャラクターが人気の元となっています。エッジそのものは耐久性が高く長期使用に耐えますが、コンプライアンスの低さを補うために比較的柔らかいダンパーと組み合わせる必要があり、ユニットとしての寿命はダンパー側に依存します。
5-D:ワンピース・フィックスド・エッジ(E155/D130の初期タイプ) ワンピース・フィックスド・エッジ JBL初期の製品に見られた、コーン紙の上端を波形状にプレス成形したコーン一体型のエッジです。エッジ鳴きを防ぐためにダンプ材を塗布してありますが、大振幅は望めず、初期動作が鈍く直線性もあまり良くありません。
高域にエッジの共振によるピークを生じる傾向がありますが、明るくドライな音色を持ちます。

6:コーン紙の形状

コーン紙の形状は主に指向性と高域特性に深く関わってきます。JBLのコーンは以下に大別されます。

6-A:リブ付きストレート・コーン
(2235H/2245H/1500AL/1200FE 等)
円錐型コーンに同心円状にコルゲーション・リブによる補強を施したコーンで、分割振動が少ないためJBLでは大口径ウーファー用として最も多く用いられています。コーンの絞り角度によって指向性をコントロールできますが、強度と音色も同時に変化します。
リブ付きストレート・コーン
6-B:ストレート・コーン
(150-4H/E145)
直線的断面形状の円錐型コーンです。強度はコーン紙の素材と厚さに依存する部分が多く、また十分な強度を確保するためには深い絞り角度が必要になります。このため、指向性を広く確保することが難しく、ベース用などの楽器用に主に用いられます。
ストレート・コーン
6-C:カーブド・コーン
(LE8T-H/2220H/E130/2213H/2251J)
エクスポネンシャル(放物線)形状の断面を持つコーンです。構造的な強度が高くコーン紙を薄くできるため高い感度が得られます。広い指向性と優れた高域特性を持ち、フルレンジユニットやミッドバスユニット、楽器用スピーカーなどに用いられます。低域専用に用いる場合には、さらにコルゲーションによる補強を施します(2213H)。
カーブド・コーン

7:コーン紙素材

コーン紙の素材には振動系の軽減のための軽さと、分割振動を防ぐための剛性、そして使用帯域内で固有振動によるカラーレーションを付加しないための適度な内部損失など、一見相反する特性が必要であり、その選択はユニットのサウンドキャラクターを決定付ける最も重要なファクターの一つです。現在様々な素材が用いられていますが、おおよそ以下に大別することができます。

7-A:ペーパーコーン パルプを主原料とした代表的な振動板素材です。パルプ繊維の長さや密度、パルプ自身の原材料などにより、幅広いチューニングが行えるのが特徴です。JBL では永年の経験から用途に合わせた最適なチューニングが行えるため、価格帯を問わずペーパーコーンを広く採用しており、その過渡特性に優れたタイトな低域がJBLの特徴ともなっています。また、剛性を高める為にグラスファイバー(ME150HS/2251J)やケブラー繊維(1200FE)を混入したり、アクアプラスを塗布(1500AL)することで分割振動を抑えるなどの工夫を加えています。また、自然乾燥によって繊維の結合を高めたプレミアム・ペーパーコーンをフラッグシップK2 S9800とS143のウーファーに使用しています。
7-B:高分子系コーン ポリプロピレンに代表される樹脂系コーン素材です。内部損失が大きく共振ピークが低いため歪みの少ない特徴を持ちますが、ペーパーコーンに比べ質量が大きく能率が低いことと、過度特性が劣るため、JBLでは一部のシステム(Ti-Kシリーズ)のウーファーまたはミッドレンジにしか使用されていません。
7-C:金属系コーン アルミやチタンに代表されるコーン素材です。剛性が高いため薄く軽量化が図れますが、内部損失が小さく共振ピークが大きいため大口径ユニットには好ましくありません。JBLではミッドレンジ用としてチタンを採用(804Ti)しています。

8:センタードーム

センタードームはマグネットギャップ内に異物が入り込むのを防ぐ役割からダストキャップとも呼ばれますが、ユニットの高域特性を左右する重要なパーツです。

ウーファー用にはスムースな高域減衰特性を持たせるためにコーン紙と同じ厚手のペーパードームを用います(2235H/1500AL)。ミッドバス・ユニットのように中高域特性も重視したユニットには、薄いペーパードームが使われます(2123H/2251J)。さらに、フルレンジユニット(LE- 8T)やワイドレンジユニット(E130)には、センタードームを高域用ダイアフラムとして積極的に活用するためにアルミニューム・ドームが用いられます。逆に、サブウーファーなど中高域特性をまったく必要としないユニットでは、センタードームをボビン径よりも大型化することで高域減衰を早めると共に、コーン紙にリブを渡したような構造を採ることによってコーンの強度を高める働きを持たせています(HB1500)。

9:フレーム

フレームフレームは、重い磁気回路を支え、ユニットをバッフルに強固に固定するためのベースです。各パーツの位置関係を厳格に保ち、振動系の正確なピストン運動を助ける基盤となるパーツで、何よりも高い剛性が求められます。安価なユニットでは鉄板をプレスした物やプラスチックが用いられますが、JBLでは古くからアルミダイキャストをフレームに用いてきました。これは、素材の剛性が高く、加工精度が高い事に加え、形状の自由度が高いため構造面からも理想を追求することができるからです。

フレームはコーン背面の風圧のさまたげになってはならず、できるだけ小さな表面積で重たい磁気回路を保持する必要があります。このため、リブを配した複雑な構造を必要とします。磁気回路のヒートシンクを兼ねたバックカバーと一体となり、背圧を見事にコントロールしたK2用ウーファー1500ALのフレームの持つ機能美は、JBL半世紀の集大成とも言える物です。

JBLテクノロジー

JBLスピーカーシステムの多様なキャラクターは、これらユニットに用いられるパーツの素材や形状、機構などの組み合わせにより生み出されたものです。用途に合わせて数限り無い選択肢の中から最適なパーツを選びだし、目的のサウンドを生み出す技、これこそが伝統に培われたJBLテクノロジーの神髄です。これらJBLテクノロジーの集大成として、最新の1500FEウーファーユニットの構造図を示します。巻頭の2225Hと比較していただくと、進化の跡がお解りいただけると思います。

  • JBL ウーファーユニット構造図
  • 1500FE搭載のスタジオモニター/Model 4348
    1500FE搭載のスタジオモニター
    Model 4348

1500FEの磁気回路には、ポールピースセクションを上下に延長することで上下対象磁界を形成しながら時期飽和を減少させ、ギャップ内のフラックスレベルを高めたニュージェネレーションSFG磁気回路を搭載しています。さらに、コッパー・ギャップ・リングとアルミ・ショートリングを装着することで高調波歪を低減。NOMEXデュアルダンパー、EPDMフォームラバー、アクアプラス・コーティングのピュア・パルプ・コーンの採用など、まさにJBLテクノロジーの結晶です。

Pickup